蓬莱の人々

 広瀬は教室を見渡してほのかに苦笑する。同じ年頃の子供ばかりが四十人。学校であれば当然のことだが、一旦学校を出てしまうとこれほど奇異な光景もない。同じ歳の、同じ服に身を包んだ、同じような顔の人間の群れ。誰もが優等生然とした顔つきで、それがずらりと並んでいるのは鶏卵のパックを思い出させた。
魔性の子 , p.22

 蓬莱に所属するキャラクタを一覧にまとめた。

読み 名前 説明
あさの
いくや
浅野
郁也
いくた 生田 高里が通う高校の英語教師で、高里が1年生時の担任。サッカー部顧問。行動力のある熱血漢。高里を家で保護しようか考えていたが、ヤンチャ盛りの子供が2人いるため断念した。学年末の終業式後に高里へ喝を入れた当日、帰宅時に居眠り運転による単独事故で死亡。祟りについてどこまで信じていたかは不明だが、喝を入れた直後、高里の今後について後藤に頼んでいた。[魔性 , p.166 , l.2]
いわき 岩木 高里と同じ高校の生徒。クラスは2年5組。選択授業で合同授業になったり体育祭で同じ青軍に分けられたりと、高里がいる6組との交流は深い。化学準備室の常連。ぶっきらぼうだが、野末曰く、結構正義漢。高里のことを、無口でとっつきにくいが単に暗い奴なだけ、と思っている。高里にまつわる神隠しや祟りの話を知らず、説明されても信じなかった。高里が噂を否定せずに放置していることに苛立ちを覚え、噂を自分の口で否定するよう、さとす。その際、祟りを否定するために高里の横面を叩いた。翌日、体育の授業で騎馬戦の練習をしているときに、同級生たちに踏み潰されて死亡。享年17。岩木の死後に2年6組で死者・負傷者が続出し、彼らに踏み殺された岩木の祟りだという噂が校内で広まった。また、校内に岩木の霊が出るという噂が立った。 泰麒が阿選を欺くために無理を押して叩頭したとき思い浮かべた「彼」は、岩木のことである。 [魔性 , p.41 , l.4]
おかだ 岡田 高里と同じ高校の生徒。クラスは2年5組か6組と思われる。岩木が高里に態度を改めるよう注意したとき、教室へ駆けつけた広瀬に、岩木を止めるよう頼んだ。[魔性 , p.108 , l.3]
ごたんだ 五反田 高里と同じ高校の生徒。クラスは高里と同じ2年6組で、委員長。知的好奇心が旺盛。中学3年で引越してきて高里と同じクラスに転入し、同じ高校に進学して1・2年でも同じクラスになる。高里の祟りについて知っており、高里に対しては当たらず触らず、といった態度をとる。クラスメイトが高里を吊るし上げたときには、後藤へ助けを求めるため化学準備室に駆け込んだ。騒動から3日後、吊るし上げに参加した人数を広瀬から訊かれた際には、クラスメイト40人がどう動いていたか正確に答えた。高里を信奉する坂田にうんざりしながらも、高里がいかに非凡か語る坂田の電話に数時間付き合った。後日、自分なりに分析した坂田の思想や高里の祟りの法則について、広瀬へ説明した。[魔性 , p.48 , l.11]
ごとう 後藤
さかた 坂田 高里と同じ高校の生徒。2年生で、クラスは1~4組のいずれか。化学準備室の常連。高里と同学年だが同じクラスになった事はなく、交流も特にない。祟ると噂されている高里を特別な存在だと思っており、高里を普通に扱おうとする岩木に忠告し、高里を叩いた岩木が死んだときには嬉しそうな様子を見せた。「高里は特別な存在で、特別に扱わねばならず、それを本人も望んでいる」と考えている。祟りがエスカレートするとともに、高里を信奉し、自らを高里の理解者だと考えるようになる。2年6組の生徒に何度も電話して高里を崇めるよう勧めたり、高里を慰めようと電話を掛けたり直接家を訪ねたり、教育実習を終えた広瀬の自宅に押し掛けて高里の行方を尋ねたりと、異常な行動力を示す。一貫して高里に好意的な態度をとっていたが、高里の祟りについて記者にリークした報復なのか、電車に撥ねられて死亡した。なお、高里が広瀬宅にいる事をマスコミにリークした疑いもある。[魔性 , p.66 , l.18]
すぎさき 杉崎 高里と同じ高校の生徒。1年生。化学準備室の常連。怪談好きだが、高里の神隠しの話は知らなかった。死んだ岩木の霊が学校に出るという噂や、2年6組の生徒が連続して死傷するのは岩木の祟りだという噂、磯の匂いのする何かが這った跡が校内で見つかった事、坂田が電車事故に遭った事、怪談に登場する「キ」を探す女が「ハクなんとか」も探している事、「キ」は動物の名前である事などを広瀬に教える。橋上野末とともに広瀬のお別れ会を開いた。学校の倒壊に巻き込まれ、生死不明となる。[魔性 , p.64 , l.10]
すぎもと
ゆか
杉本
優香
せた 勢多 高里と同じ高校の生徒。クラスは2年5組か6組と思われる。体育祭に使う立て看板を制作しているとき、使っていた鋸で築城に怪我を負わせてしまう。その後、保健室まで付き添った。[魔性 , p.56 , l.14]
たかさと
かなめ
高里
たかさと
さなえ
高里
早苗
たかさとすぐる 高里
たかさとみき 高里美喜
たかさとやすたか 高里康貴
たんの 丹野 高里が通う高校の教師で、2人いる化学担当教員のうちの1人。老齢で温厚な性格。後藤が使うテレピン油の臭いを嫌っているため、化学準備室に寄り付かない。[魔性 p.17 , l.9]
ついき 築城 高里と同じ高校の生徒。クラスは高里と同じ2年6組。広瀬が教育実習に来た年から化学準備室に出入りするようになった。高校が所在する地域が開発される前からの地元民で、高里が神隠しに遭った事を知っていた。高里とは別の中学出身だが、塾で一緒の生徒が高里と同じ中学校に通っており、その生徒を通して祟りの噂を知った。当初は祟りを信じていなかったが、教えてくれた生徒が「祟られて死んでしまう」と泣きついてきた後日に死亡し、また、高里と同じクラスになった際に同級生から祟りの詳細について聞かされた事もあって、高里を気味悪く感じて忌避するようになる。神隠しの話を橋上に広めた報復に足を負傷してから連日学校を休んでいたが、6日後に再び登校するようになった。自分が負傷したならば橋上の身にも何かが起こると心配していた事からも、現在は高里の祟りを信じているようだが、高里を崇めようと勧める坂田には同調しなかった。これには、もともと坂田を嫌なタイプだと思っていた事や、坂田が記者に高里の情報をリークしている姿を目撃した事が影響しているかもしれない。学校の倒壊に巻き込まれ、生死不明となる。[魔性 , p.40 , l.11]
ととき 十時 高里が通う高校の養護教諭。教育実習生の広瀬と同年代。明るく陽気に振舞う。高里の祟りについては、メディアに取り上げられるまで知らなかったらしい。ニュータウンの海沿いに建つワンルームマンションに住み、軽自動車で通勤している。マスコミに追われる高里や広瀬のため、繰り返し車で送り迎えしたり、マンションの自室を日用品ごと提供したりと協力する。学校倒壊直後に、後藤が無事を確認している。[魔性 p.54 , l.14]
なかじま
ようこ
中嶋
陽子
なかじま
りつこ
中嶋律子
なかじま
まさし
中嶋正志
のすえ 野末 高里と同じ高校の生徒。1年生。化学準備室の常連。噂はあまり信じないが、噂話をするのは好き。3年の橋上と親しいらしく、橋上の手先が器用なことや、住所や自宅の様子も把握している。2年の岩木について「あれで結構正義漢」と評していた他、岩木が死んだ翌日に教室にあった菊をとって化学準備室で手向けたり、葬式の日取りを知っていたりと、岩木とも親しかった可能性がある。橋上・杉崎とともに広瀬のお別れ会を開いた。学校の倒壊に巻き込まれ、生死不明となる。[魔性 , p.41 , l.12]
はしがみ 橋上 高里と同じ高校の生徒。クラスは3年5組。化学準備室の常連。手先が器用で日曜大工もこなすオタク。高里の祟りや神隠しのことは、築城から教えられるまで知らなかった。築城に口止めされていたにも関わらず直接高里へ神隠しについて尋ねた直後に、ひとりでに動いた釘が手に刺さって負傷する。自分を傷付けた釘を「幽霊を信じない自分の考えが変わるきっかけになるかも」と記念に持ち帰ったり、神隠しに遭っていた間は宇宙人の生体実験を受けていたのではないかと高里に言ったりと、変わったところがある。謎の女と一つ眼の犬が「キ」について尋ねてくる怪談を、広瀬たちに教えた。野末杉崎とともに広瀬のお別れ会を開く。学校倒壊時は、被害を免れた体育館にいたため無事だった。[魔性 p.41 , l.13]
ひろせ 広瀬
よねだ 米田 高里が通う高校の美術教諭で、必修クラブの美術担当(おそらく美術部顧問も兼任)。必修クラブ中に生徒が美術室以外のところで勉強したり遊んだりしているのを黙認する他、美大志望の3年生が「教師に恵まれていなかった」と思っている事から、指導に熱心なタイプではないらしい。[魔性 p.44 , l.12]
わたなべ
ひでなお
渡辺
秀直