慶の人々

「初勅以来、改革も進んでいるようだし。半獣、海客に関する規制が撤廃されたよ。それも勅令で断行だってさ。なんでも禁軍の左軍将軍が半獣のお方だとかで」
「あら、すごい」
「やっと、と言うべきじゃないかな」
「景王が勅令でそれをやった、というのがすごいじゃない。あそこって、そういう勢いのあることが、本当になかったんだもの」
華胥の幽夢 , pp.334-335

 慶に所属するキャラクタを一覧にまとめた。

読み 名前 説明
あおざる 蒼猿
ういきょう 鶯嬌
えんほ 遠甫
おんせい 温精
かいこ 芥瑚
がいし 凱之
かき 嘉煕
かくご 革午
かけい 嘉慶
がほう 呀峰
かんたい 桓魋
ぎょくよう 玉葉
けいき 景麒 予王および中嶋陽子を選んだ麒。
けいけい 桂桂
こうかん 浩瀚
こしょう 虎嘯
さいぼう 柴望
しきょう 支僑
じゃっこ 雀胡
じゅうさく 重朔
しょうけい 祥瓊
しょうこう 昇紘
しょうはく 松伯
じょうゆう 冗祐
しょうらん 蕭蘭
しょうろう 松老
じょえい 舒栄
じょかく 舒覚
じんらい 迅雷
すいが 酔臥
すいりょう 遂良
すず
せいきょう 靖共
せいこう 青江
せいしゅう 清秀
せいはく 清白
せっき 夕暉
そけん 祖賢
たつおう 達王
ちょうこう 長向
としん 杜真
はくおう 薄王
はんきょ 班渠
ひおう 比王
ひしょ 丕緒
ひょうき 驃騎
めいしゅ 明珠
ようこ 陽子 現景王。字は赤子。蓬莱での名は中嶋陽子。十二国記シリーズにおける主人公の一人。
よおう 予王
らんぎょく 蘭玉
らんけい 蘭桂
りおう 悧王
れんか 蓮花
ろう
ろうしょう 老松

 慶国は陽子が即位した後、宮廷を牛耳る官吏が一斉に処分されたり、半獣・海客に対する規制が撤廃されたりと、体制が一新され改革が進んでいきます。そんな慶の様子を見て、宗王家は「慶はそういう勢いのあることが本当になかった」と驚きます∗1。「本当になかった」のです。600年もの間慶を見てきた人たちが言っているのですから、慶は本当にそういう変化や動きがなかったのでしょう。
 変化や動きがないと言えば、拓峰の乱での描写が思い起こされます。拓峰で乱が起き、昇紘を糾弾する恰好のタイミングであるのに住民は家に閉じこもり、反乱を起こした虎嘯たちに呼応することはありませんでした∗2。それだけでなく、拓峰の街に火がかけられたとき、火を点けた州師ではなく、昇紘に逆らい乱を起こした虎嘯たちの方を責める民の描写があります∗3
 もう一つ確認しておきたいのが、女王に対する国民の反応です。女性である陽子を新王として迎えたときに、溜息をついた官吏たち∗4。新王が女王だと知って、帰国を後悔した国民∗5。こうした官吏や国民が抱く不安には無能な女王が続いた事も関係しており、陽子自身も、女である自分が玉座に座ることに対して官吏たちが不安を抱いていることを察していました∗6
 これらを踏まえると、慶の国民性は「保守的・事なかれ主義で不安感が強い」と考えられるのではないでしょうか。

 そこで思い出されるのが、陽子自身の性格です。陽子は即位した後、自身が王でありながら他者の顔色を伺い、官や民から愚王と評価されることを怖れていました。もともと蓬莱にいた頃から、周囲の人の顔色を窺い、誰からも気に入られるよう振舞っていたのです。∗7
 陽子は生まれも育ちも蓬莱ですが、慶の国民であることに変わりありません。このような性格であったのも、「保守的・事なかれ主義で不安感が強い」国民性を体現していたと言えるのではないでしょうか。(まあ、拓峰の乱の後は一皮剥けて、バンバン改革していくわけですが……)

 ちょっと強引な推察ではありますが、こんな感じが慶の国民性なのかな、と勝手に思っています。

∗1
華胥の幽夢 , pp.334-335

∗2
風の万里 黎明の空 (下) , pp.278-279

∗3
風の万里 黎明の空 (下) , p.318

∗4
風の万里 黎明の空 (上) , pp.31-32

∗5
風の万里 黎明の空 (下) , p.97

∗6
風の万里 黎明の空 (上) , p.101

∗7
風の万里 黎明の空 (上) , p.177