黄朱の里の里木は貧弱な枝をしている。それでも間違いなく、子を与えてくれるのだ。現在の地位も生まれた国も関係がない。行って願い、願いが届けば金色の実が生る。里木を戴いた小さな里は、どんなに貧しくとも黄朱の故郷だ。黄海の外に出れば数限りない迫害に曝される黄朱にも、帰るべき、守るべき故郷があることが、黄朱の誇りの拠り所になる。たとえ一生黄海に足を踏み入れることがなくとも、ただの一度もその里を見ることがなくても、余人に嫌悪され、恐れられる場所でも、黄海こそが紛れもない郷里だ。

図南の翼 , p.351

サイト名 ： イタチ研究所
url ： https://itachilab.web.fc2.com/index.html
管理 ： イタチ兄弟

• itachi_kyoudai@yahoo.co.jp