範【はん】

国名 範西国
国氏
首都州 不明
首都 不明
王宮 不明
麒麟 氾麟(字は梨雪∗1∗2
国王 呉藍滌∗1∗3
即位 約300年前∗4

 四大国の一。西に位置し、恭・才に挟まれ、虚海・白海に臨む。

 初出は『月の影 影の海 (下) 』 p.63 , l.3。

範国全図図1 範国全図∗5

∗1
黄昏の岸 暁の天 , p.315

∗2
赤楽3年時点での字。

∗3
「呉藍滌」が姓名であるか氏字であるかは不明。また、他のキャラクタの傾向から「呉」が姓ないし氏で「藍滌」が名ないし字であると考えられるが、明確な描写はない。

∗4
黄昏の岸 暁の天 , p.310

∗5
月の影 影の海 (上) , p.4 に記載されている「十二国図」をもとに作図。


地域

 地名に関しては、一切情報がない。

 資源に恵まれず、工芸以外に目立った産業はない。∗6

∗6
黄昏の岸 暁の天 , p.339


歴史と情勢

 約300年前に呉藍滌が即位した。
 匠の国として知られ、宝飾品や様々な道具を作り、輸出している。∗7
 範はもともと目立った産業や資源に恵まれておらず、呉藍滌が工匠の国として立て直した。範の工匠は玉や金銀の細工に優れ、紙や布といった素材から、それらを作るための機器や道具まで作る。∗6

 現在の情勢に関して、宗王から訊かれた利広が「ちょうど大きな節目に差し掛かる頃合いですが、(中略)問題なくその先に進みそう」∗8と評価している。
 利広は、王朝が存続するうえで治世300年のあたりに「大きな節目」があり、この頃に王が豹変して王朝が倒れることが多いと考えている∗9。つまり利広は、呉藍滌が豹変するようなことはないだろうと評価したのである。


 600年近く前∗10、時の氾王が道を失い民を虐げていた。これを憐れんだ才の王――遵帝――が範の国民を保護するため範国内に才の王師を派遣したが、この行為が覿面の罪にあたったため遵帝は急死した。∗11
 遵帝登遐の後、時の氾王がどうなったのかは不明。

∗7
アニメ『十二国記』第21話

∗8
華胥の幽夢 , p.333

∗9
華胥の幽夢 , p.310

∗10
黄昏の岸 暁の天 , pp.286-287 の描写で、約600年前に即位した宗王が即位間もない頃に遵帝の支援を受けていた事、約500年前に13歳足らずで尚隆を選定した延麒が遵帝のことを「俺が生まれるより遥か以前にいた王」と言っている事が分かるため、このように表記した。

∗11
黄昏の岸 暁の天 , pp.164-165


他国との交流

 雁とは、古くから国交がある。雁は建物や港を造るのが得意だが、そのためには精度の高い範の道具や範の工匠の協力が不可欠である∗6。このため、範と雁は王・麒麟同士においても深い交流がある。
 氾麟が雁国の下官のもてなしに不満を言っている∗12事から、氾麟自ら雁の王宮を訪れたことがあると分かる。
 また、氾王は尚隆と六太に対して「猿王・山猿」「小猿」呼ばわりしており∗13∗14、氾麟も尚隆と六太を呼び捨てで呼んでいる∗15。逆に、尚隆も氾王と氾麟に対して「貴様」「お前」と呼んだり∗14∗15氾麟に対して「〔服装に満足いかずに部屋から出てこない氾王へ〕不満があるなら裸で出てこいと言ってやれ」∗15などと言ったりしており、六太も氾王と氾麟に対して「あんた」「小姐ちゃん」と呼びかけている∗16∗17。こういった様子から、範と雁は王・麒麟同士で互いに気安い関係を築いている事が窺える。

 戴とも、古くから国交がある。戴は玉の産地であるため、範は戴から玉を輸入し、それを加工して宝飾品にしている。∗18
 氾王の発言から、驍宗の即位の儀に氾王自ら出席している事が分かり、また、先代の驕王とも面識があると考えられる。∗18

 峯王仲韃が即位したときに慶賀の勅使を送っている。∗19
 これは近隣国の立場から勅使を送ったにすぎず、それ以降にさしたる国交は持っていないようである。

 泰麒捜索の際、麒麟に手を貸してほしいと雁から声がかかると協力に応じて、氾麟を慶に派遣した∗20。それだけでなく、氾王も自ら慶に出向いて失踪した驍宗に関する情報を提供し∗21、泰麒捜索にも立ち会った。

∗12
黄昏の岸 暁の天 , p.344

∗13
黄昏の岸 暁の天 , p.347

∗14
黄昏の岸 暁の天 , p.362

∗15
黄昏の岸 暁の天 , p.342

∗16
黄昏の岸 暁の天 , p.348

∗17
黄昏の岸 暁の天 , p.358

∗18
黄昏の岸 暁の天 , p.320

∗19
風の万里 黎明の空 (上) , p.185

∗20
黄昏の岸 暁の天 , p.277

∗21
黄昏の岸 暁の天 , pp.318-322